おすすめの本
このお話は前編を読んでからにしてほしい。
なぜ、このお話を前後編にしたかというと、ただ「ゾウのウンチが世界を変える」という本を読んだだけではなく、実際に書かれた著者の植田さんに会いにいってお話を聞いてきたからだ。
ビジネスの失敗
とんでもない事になったスリランカのリサイクル工場。
スリランカの内戦激化により、日本のからの助成金13億円が見込めなくなる主人公のヒサシ。自分の資金だけがどんどん無くなっていく。
そしてまだ資金が残っている内に、なんとかリサイクル以外の道を模索し始める。思いつくままにヒサシはありとあらゆるビジネスを手を出していくのだが…。
- 高級茶葉の買付 → ×失敗 非力な営業力・粗末な商品・関税が高い
- 宝石採掘ビジネス → ×失敗 宝石が出ない・出ても盗まれる
- フカヒレビジネス → ×失敗 他からの妨害・技術不足・知識不足
ぞうさんペーパーの誕生
ことごとくビジネスは失敗していよいよ資金もなくなりつつあるヒサシ。そんな土壇場の状況で、ついに運命のアイテムとの出会いを果たす。それが「ぞうさんペーパー」だ。
当時のスリランカでは製紙工場がないため、紙は輸入に頼っている状況だった。そのため紙自体が高価で、田舎の町では個人が手漉きで紙を作っているところもあったそうだ。
ヒサシはふとした折に、ゾウのウンチをリサイクルして紙を作っている老夫婦を見かける。そしてその手漉きの紙に衝撃を受け、活路を見出いすことを決める。
ぞうさんペーパーはスリランカでもまったく知られていないアイテムだった。ゾウは消化が悪いため、植物をたべても繊維がたくさん残ったウンチを出す。それを長時間茹で、完全に殺菌して残った繊維を古紙と混ぜ漉してゾウさんペーパーは作られる。
覚悟を決めたヒサシは日本の和紙工房を訪ねたり、何度も製造方法を試行錯誤していき、品質的に充分なぞうさんペーパーを完成させた。
ぞうさんペーパーは臭いなどまったくしない。ナチュラルでカラフルな色合いと、手触りがまるで和紙のようだ。老夫婦も技術指導者として迎え入れ、ぞうさんペーパーを作る工場を始動させてゆく。
日本で平和に暮らしている日本人の視点からすると全く想像ができないのだが、スリランカには野生のゾウがおりたびたび人間を襲撃するそうだ。
森林開発によりジャングルをおわれ、食糧や住み家をなくした動物たち。
その中でも特に植物を食べる動物のゾウが、人里に入り込んでは畑や民家を破壊していたのだ。年間で120人以上の人間がゾウに殺されているという。
一方で、240頭ほどのゾウも人間によって殺されている。ゾウは電線で感電したり、水路にも落ちることもあるそうだ。人間とゾウは殺し殺されの関係になってしまっているのだ。
お互いを敵視しているような状況で、このぞうさんペーパーは一つの道を照らしだす。親ゾウが殺され孤児となったゾウを引き取る。ゾウに食事を与えウンチをだす。
ウンチを綺麗にして、古紙と混ぜて、ぞうさんペーパーをつくる。それを日本で売る。そうすると利益が出る。
人間はゾウがいるからこそ紙を作ることが出来、自分たちが暮らしていける。
ゾウは自分たちがウンチを出すから、殺されることなくごはんを食べられる。
今まで憎しみあっていた両者が歩みあえたのだ。
ゾウと人間の共存である。
こうして出来たぞうさんペーパーだが、すぐに売れたわけではなく日本の動物園などに地道に営業をかけて少しずつ売れていくようになった。
徐々に、工場の生産量が増え、品数も増え、空輸から海上コンテナに変えて輸出するほどになっていった。
この人間とゾウの共存の取り組みは、世界に受け入れられ、 ついにはぞうさんペーパーで作られた絵本も作られた。自然・環境破壊・野生動物絶滅危機などのメッセージが込められている。
さらには、同じような環境に良い商品を次々と生み出すことになる。
しかし、この後もヒサシの受難は続く、この後、とんでもない問題が起こり、ぞうさんペーパーは最大のピンチを迎えることになる。
作っても売ることができず、途方にくれることになり、当時のアメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュも出てくる大問題が出てくるのだが、そこは本書を手に取って読んでみてほしい。
運命の分岐点 東日本大震災
大統領も出てくる問題の後、ビジネスは軌道にのっていた。
ヒサシは東京とスリランカを拠点にしており、東京に家族を残して新たに販路を伸ばし韓国に出張していたある日。運命の2011年3月11日がやってくる。
日本は未曽有の災害に見舞われる。
東日本大震災
今なお、傷跡を残しているこの地震は、ヒサシの人生も変えた。
東京にいた奥さんのミチさんと息子と娘はなんとか無事だった。
なんとか戻ったヒサシだが、東京がまるで世界が変わっている。高速道路は封鎖、空港は人で溢れかえっている、メルトダウンの発生、食料の不安。今まで当たり前だと思っていた事が一瞬にして、崩壊していく。
あの時、多くの日本人が絶望を味わった。
そして、その一人であるヒサシは考えた。
自分で水や野菜やコメを調達できる環境に身を置かなければならない。自分たちが食べるものは自分たちで作る。
そう感じたヒサシはすぐに行動を起こす。
30年近く家のローンがあったとしても、たとえ子供たちが転校しなくてはいけないとしても、彼は候補地を探し、日本を見て回った。
そしてたどり着いたのが、広島県山県郡北広島町の芸北。
広島県と島根県の境目だ。
そして現代へ・・・
こうして、芸北にやってきた植田さんご家族は今、「ぞうさんカフェ」というカフェを経営しながら、芸北で色んな活動を展開しており、それが冒頭のYoutubeの動画で語られている。
そうだ会いに行こう!
この本を読み終えたあと、自分はすぐさまパソコンを立ち上げ調べてみた。そして植田さんご本人の連絡先がわかったので、すぐに連絡をとってみた。
「むさぼるように本を読みました。これは是非、たくさんの人に読んでほしい!」そういった感情を、こっぱずかしながら感想文にしてお送りした。ぜひ、一度、会って話を聞いてみたい。
「今度、お話を聞きにいってもいいですか?」
「待ってるよ」
嬉しくなり、お伺いすることにした。
正直、自分が住んでいるところからはかなり離れていた。
それでもこんな凄い人生を体験した起業家の方と、お話できる機会は滅多にないと思い、車をぶっ飛ばした。
車を走らせていると、北広島の町並みが見える。畑、畑、畑、民家。
東京や大阪と比べて自分が暮らしているところは、田舎だと思っていた。
だが、この北広島はその比ではなかった。ここ数年で5校あった小学校のうち4校が廃校になったらしい。ここは少子高齢化の最前線なのだ。
主人公ヒサシとのご対面
「ぞうさんカフェ」にたどり着いて、お店に入ると、男前の男性と、髪をくくった女性が接客をしていた。
男性は「井筒智彦」さんだ。
井筒さんのプロフィールは凄まじい。なんとNASAの就職を蹴って、このゾウさんカフェで働いているのだ。広島ではテレビとラジオにも出演されており、「宇宙博士」の愛称で親しまれている。この人も植田さんに影響された一人だ。
「東京大学理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士課程修了。博士(理学)。オーロラ粒子の波動輸送現象を世界で初めて実証。地球電磁気・地球惑星圏学会オーロラメダル受賞。同年5月、NASA人工衛星の解析チーム入りを辞退し、、少子高齢過疎化が深刻に進む北広島町芸北地域に移住。狩猟家としての一面も持つ。」
井筒智彦宇宙博士 プロフィール(HPより抜粋)
この人にも会えると思っていなかったので、少し驚きながらもたくさんお話をすることができた。
いかにして、この芸北を、そして、宇宙を盛り上げていくかで頭がいっぱいなようで、宇宙に関するアイテムをお渡しすると子供のように喜んでくれた。それでいて会話をしていると、普通の人なら思考停止してしまうようなところも鋭い指摘が入り、かなり頭の切れる人だと感じた。
そして女性は、あのミチさんだった。植田さんの奥さんであり菩薩様だ。
なぜ菩薩様なのかは割愛するので、ぜひ、本を読んでみて欲しい。
「ぞうさんカフェ」は名前の通り、カフェなので、飲み物を注文して待つこと数分、ついに植田さんとお会いすることができた。
たくさんのお話をしてもらった。
今の自分の現状、これからの日本の未来、投資について、ビジネスについて、自分がこれからどの道を進めばよいのか。
そのどれもに的確にアドバイスをしてくれた。
これからの時代は英語は必須なので習得するべきと教わり、ブログを立ち上げるならすぐにしなさいと言われた。
そう、このブログが立ち上がったのは植田さんの言葉があったからなのだ。
植田さんはこれからも本の執筆をつづけるそうだ。
これからは、この芸北、限界集落でいかにしてビジネスを展開していくか、そして海外でどのようなビジネスを展開していくかを語っていた。
しかもこの本を映画化を狙っているという野望も話されていた。
余談だが、有名なマザーハウスの山口絵理子さん(アジア最貧国と呼ばれるバングラディッシュで、バングラディッシュ人が豊かになるためにバッグなどを作るビジネスを展開している凄い人。カンブリア宮殿とか様々なメディアに取り上げられている)は、ジュエリーも手掛けている。
そのジュエリーはスリランカのものなのだが、ノウハウを教えたのは植田さんという驚きの裏話を教えてもらった。紅茶や宝石ビジネスの失敗はある意味失敗ではなかったのかもしれない。例え失敗のように見えたとしても、それは経験となり次の誰かのステップにつながっていることもあるのだろう。
セレンディピティ
セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「serendipity」という言葉は、イギリスの政治家にして小説家であるホレス・ウォルポール[が1754年に生み出した造語であり、彼が子供のときに読んだ『セレンディップの3人の王子(The Three Princes of Serendip)』という童話にちなんだものである。セレンディップとはセイロン島、現在のスリランカのことであるから、すなわち、題名は「スリランカの3人の王子」という意味である。ウォルポールがこの言葉を初めて用いたのは、友人に宛てた書簡において、自分がしたちょっとした発見について説明しているくだりにおいてであり、その書簡の原文も知られている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
セレンディピティ。たまたま本屋に立ち寄って、手に取った本。
その本の情熱に偶然にふれ、植田さんと会うという幸運を手にした。
しかもセレンディピティの語源の舞台はスリランカ。何か縁があると思わらないだろうか?
こんなセレンディピティは自分だけが体験したわけではない。
「物を売るバカ」の著者 川上徹也さんも、植田さんを中心とした「セレンディピティ」について語っている。
今回、植田さんとお会いできた事で、さらに自分の知識と経験が広がっていく感覚を得た。そして、この先、どうように進めばいいかがわかった。
ビジネスについて悩んでいるビジネスマン、就職について悩んでいる就活生、人生が物足りないと思っているあなた。
一度、この本を手に取ってご覧になってみてはどうだろう。
そこには冒険が待っている。